東北の北部(=北東北)に生育可能な樹木の生活形による分類

具体的には岩手県南部の一ノ関から北海道西南部ということのようです。
このリストは(株)小岩井農牧環境緑化部発行の「小岩井の緑化植物」を参考にして加筆しました。
これは庭園木のリストなので、実際にこのリストにある木が自然に山里に生えているとは限りません。
山野にある樹木、街路樹、庭園木、輸入種も入っていますが、それはそれで面白いのではないかと思い、あえて削除しませんでした。
  特に、耐寒性についての表が面白いですので、ご覧下さい。

樹高による分類

大高木
15m以上
高木
10m前後
小高木
(5〜6m前後)
中木
大きな低木
(3〜4m)
低木
(1〜2m)
小低木
地被植物
(30センチ)
つる植物
(針葉樹)
アカエゾマツ
アカマツ
ウラジロモミ
クロマツ
ドウイツトウヒ
トドマツ

(広葉樹)
メタセコイア
イチョウ
オヤマザクラ
ケヤキ
シナノキ
トチノキ
ハルニレ
ブナ
プラタナス
モミジバフウ
ユリノキ
(針葉樹)
イチイ
ニオイヒバ

(広葉樹)
アズキナシ
イロハモミジ
エゴノキ
シダレザクラ
ソメイヨシノ
ハウチワカエデ
ヤエザクラ
ヤマモミジ
(針葉樹)
オウゴンコノテ
チャボヒバ

(広葉樹)
アオダモ
アメリカザイフリボク
カリン
サルスベリ
サンシュユ
ツリバナ
ナナカマド
ハクウンボク
ハナミズキ
ヤマボウシ
(広葉樹)
アセビ
ガマズミ
サラサドウダン
タニウツギ
ハコネウツギ
ハナズオウ
ヒメコブシ
ビックリグミ
ピラカンサ
ベニウツギ
ムクゲ
モクレン
ライラック
レッドロビン
(針葉樹)
キャラボク
モンタナハイマツ

(広葉樹)
アオキ
アベリア
エゾムラサキ
エゾユズリハ
カルミア
キリシマツツジ
セイヨウシャクナゲ
ボックスウッド
リュウキュウツツジ
アジサイ
ウメモドキ
オトコヨウゾメ
コデマリ
サンゴミズキ
シモツケ
トウゴクミツバツツジ
ドウダンツツジ
トサミズキ
ニシキギ
ボケ
ヤマツツジ
ヤマブキ
ユキヤナギ
レンギョウ
(針葉樹)
ハイビャクシン
ラインゴールド

(広葉樹)
コグマザサ
コトネアスター
ピンカミノール
フッキソウ
ヤブコウジ
アケビ
ナツヅタ
ヤマブドウ

クリスマスによくモミやドイツトウヒの幼木が売られていますが、これを庭に植えて巨大になったという話をよく聞きます。
実際に私の同僚も子供の三歳の誕生日に買ったモミの木が成人式頃には二階の屋根を追い越して、家に日があたらなくなり、やむえず切ったとのこと。
やはり木は最終的な大きさを計算して植えなければなりませんね。


耐寒性による分類

「人は見かけによらないものだ」ということわざがあるとおり、植物も見かけによらないものだと思う。

(寒さに弱い針葉樹の存在)
針葉樹は一般に高緯度地方に見られるので、寒さに強いと思われるが、ヒマラヤシーダーとモミは暖温帯の植物なのだろうか、
岩手県南部までの寒さにしか耐えられないのは名前から受ける印象が印象だけに非常に以外な感じがする。(赤で示した)

(寒さに強い常緑広葉樹の存在)
岩手のような寒さの厳しい冷温帯で広葉樹が生き延びるためには、葉を落とさざる得ないと思っていた。
つまり常緑広葉樹は存在せず落葉広葉樹のみと思っていたが、常緑広葉樹はあるのには驚いた
しかも、名前がリュウキュウツツジとは「琉球=沖縄=南国=南国でしか育たない」という思考回路を壊してしまうおもしろさがある。(緑で示した)

特に寒さに強い木

小岩井農場で
支障なく生育している
あまり寒さに強くない木

岩手県の県南から
沿岸部南部までは支障ない

(針葉樹)
アカエゾマツ
イチイ
ウラジロモミ
ドイツトウヒ
トドマツ
ニオイヒバ
キャラボク

(常緑広葉樹)
アセビ
エゾムラキツツジ
エゾユズリハ
リュウキュウツツジ


(落葉広葉樹)
アオダモ
アズキナシ
イヌエンジュ
オオヤマザクラ
カシワ
カツラ
シナノキ
ナナカマド
ハウチカエデ
ハルニレ
ブナ
サラサドウダン

(針葉樹)
ヒマラヤシーダー
モミ


(常緑広葉樹)
アオキ
ジンチョウゲ
ソヨゴ
ネズミモチ
ヒイラギナンテン
ピラカンサ
レッドロビン



樹木の様々な性質

ここでも陽樹と陰樹という区分を、実際にこの岩手の冷温帯に即して知ることができると思います。
自然界でもアカマツなどは乾燥した尾根などにも生える木もあり、また一方でジメジメした場所が好きな植物もあります。
例えば、山歩きをしているとよく渓流沿いモミジが生えていることがよくあります。
また海岸に行けばやはり白い砂、青い海に似合うのは塩害に強いクロマツでしょうね。日本三景の松島にはクロマツがはやりよく似合います。
 例えば松尾芭蕉という人は今から300年以上も前に江戸からはるばる岩手県の平泉までやってきています。
その紀行は有名な「奥の細道」として紀行文学の傑作と言われています。その中で松島の松(クロマツがほとんど)について以下のように述べています。

松尾芭蕉「奥の細道」より 
    松 島

そもそも、ことふりにたれど、松嶋は扶桑(ふそう)第一の好風にして、
およそ洞庭(どうてい)・西湖(せいこ)を恥ぢず。
東南より海を入れて、江の中(うち)三里、浙江(せっこう)の湖(うしお)をたゝふ。
嶋嶋の数を尽して、欹(そばだつ)ものは天を指し、ふすものは波に葡蔔(はらば)ふ。
あるは二重(ふたえ)にかさなり三重(みえ)に畳(たた)みて、左にわかれ右につらなる。
負(おえ)るあり抱(いだけ)るあり、児孫愛すがごとし。
松の緑こまやかに、枝葉(しよう)汐風に吹たはめて、屈曲おのづからためたるがごとし。
その気色(けしき)えん然として美人の顔(かんばせ)を粧(よそお)ふ。

松尾芭蕉「奥の細道」 松島 現代語訳 (安倍試訳)
(松島の風景について)
本当に今までいろんな人が言ってきてはいることだけれども、やっぱり松島は日本でも一番の景色で、
有名な中国の洞庭湖や西湖に比べてもまったく遜色がない。
(島の形について)
東南の方向より、海が入り込んでおり、入り江の中は、三里ほど、あの中国の浙江のように潮が満ちてとても美しい。
島の数は数えきれないほどあり、(その島の形と言ったら)、高いものは、大空に向かってそびえ立っており、
また平べったいものは、波の間にはらばいになっているように見える島々が二重・三重に重なって見えているものもあるかと思えば、
その重なって見えているものでさえ、左側の島に離れながらも右側の島に連なって見えたりして(本当に絶妙のバランスとしか言いようがない。)
島の大きさには大小があって、人を背負っているような形のものもあれば、また抱っこしているようなものもある。まさに子供をあやしているような感じさえする。
(松の様子について)
松の緑は濃く、枝葉は潮風を受けてすっかり曲がってしまっているが、その曲がりようと言ったらまるで松の木に意識があって自分から曲がっていったかのように、
美しく屈曲している。その松の木の景色の思わせぶりなことと言ったら、ちょうど美しい女性が化粧をした時の顔のようだ。
(再び松島の景色について)
この景色をお造りになったのは、神々が生きていた大昔に、山岳の神である大山祗(おおやまずみ)の神が行った仕業だろうか。
そうした万物をお造りになった神々の業(わざ)であるこの景色の美しさは、どんなに文章が上手な人でも言葉で表現できるだろうか、いやできはしまい。


ということで、松が潮害に強くなければ、芭蕉の松島の叙述もまたかわったものになっていたに違いない。

耐陰性の強い樹木 耐乾性の強い樹木 耐潮性の強い樹木 病害虫に強い樹木 病害虫に弱い樹木
(針葉樹)
イチイ
イトヒバ
ウラジロモミ
オウゴンコノテ
チャボヒバ
ドイツトウヒ
ヒオイヒバ
キャラボク

(常緑広葉樹)
アオキ
アセビ
アベリア
イヌツゲ
エゾユズリハ
サツキ
ジンチョウゲ
ソヨゴ

(落葉広葉樹)
エゴノキ
コブシ
ツリバナ
ハクウンボク
ハナミズキ
ヤマモミジ
アジサイ
ガマズミ
コデマリ
ムクゲ
ユキヤナギ
(乾燥に強い)
アカマツ
トドマツ
イチョウ
エゴノキ
コナラ
アベリア
イタチハギ
ハマナス
ミヤギノハギ
ヤマハギ
レンギョウ

(水分の多い所に生える木)
メタセコイア
アオダモ
イロハモミジ
コブシ
シダレヤナギ
トチノキ
ハクウンボク
ハルニレ
ポプラ
ヤマボウシ
ヤマモミジ
アジサイ
カンボク
サワフタギ
サンゴミズキ
マユミ
レンギョウ
潮風に耐える木
クロマツ
メタセコイア
イチョウ
イヌエンジュ
サルスベリ
シダレヤナギ
トウカエデ
トチノキ
モミジバフウ
ハイビャクシン
アベリア
シモツケ
タニウツギ
ニシキギ
ハコネウツギ
ハマナス
イチイ
コウヤマキ
ドイツトウヒ
ニッコウヒバ
メタセコイア
イチョウ
ケヤキ
トチノキ
ユリノキ
アカマツ
サルスベリ
シラカバ
ソメイヨシノ
マサキ

小岩井農場について

ちなみにこのページを見ている方は、岩手に限らないので、ちょっとだけ紹介します。全国的には「小岩井農場」の名前で知られています。小岩井ブランドは乳製品(バターや牛乳、ジャム)にもあるので知っている方が多いと思います。また観光農園もあって全国から大勢の観光客が来ています。冬は雪祭りの会場として知られています。その会社の中に環境緑化部と言う部門がありまして、関東から東北にかけて大規模な緑化事業を行っています。とてつもなく広大な山林を抱えており、その1部では全国からの様々な緑化事業に対応するために、苗木や成木を管理しています。私も何度か行ったことがあり、様々な樹木を見せて頂きました。 さすがに全国各地の大規模な公園や住宅地の緑化事業をやっている会社だけあって、樹木のプロの方々がいらっしゃいます。なお、宮沢賢治(岩手県花巻市生まれ)は、若い頃にこの小岩井農場に行ったおりに、詩的興奮を抑えきれず、彼の最も長い長編詩「小岩井農場」を発表しています。現在、旧本部が資料館になっていて、日本の近代酪農の先駆けとなった小岩井農場の歴史と宮沢賢治に関する資料を展示しています。観光農園にいらした折りに、ぜひ歩いて数分の旧本部に足を延ばして見てください。前置きが長くて恐縮ですが、賢治の「塔中秘事」という詩にも出てくる建物、通称四階倉庫(しかいそうこ)というのもまだ現存しています。それから、資料館の裏手に日本で最初の様式サイロというのもあります。賢治の気持ちになって歩いてみてはどうでしょうか。
 なお、賢治に関するホームページは現在、無数にありますが、私のもありますのでhttp://morioka-shirayuri.morioka.iwate.jp/kenji/kenji.htmlをどうぞご覧下さい。

(小岩井農牧のホームページはこちら