向山洋一「学校の失敗」扶桑社より引用

教師の説明は30秒

授業には、きちっとした原則が存在する。

 わかりやすい例で説明してみよう。算数の授業で「わり算」などの説明をすることとしよう。最初は子どもは分からない。そこで、教師は説明する。それでも、分からない表情をする。教師は、そのまま熱心に説明をする、、、。これはありふれた場面だろう。

教師の説明はわかりにくいのである。話しが上手なベテランの話でも、教師の話はわかりにくい。

 次の法則が成り立つ。教師の説明は長くなれば長くなるほど分からない

丁寧に説明するのが、教師の仕事と思っている人が多い。親切に、一生懸命説明をする。しかし、すればするほど子どもはわからなくなるのである。

 では、長い説明とは、どの位の時間なのだろうか。割り算を5分説明すれば長いのだろうか。十分なら長いのだろうか。教師の中には20分も30分も説明する人もいる。

 どのくらいの時間なら長いと言うのだろうか。読者諸氏に、ぜひ考えていただきたい、自分の場合はどうかと。

 私に言わせると次の通りである。

 30秒以上の説明は長い。30分ではない。30秒である。30秒以上は長い。長くなると、子どもは当然わからなくなる。我慢の限界は1分である。

2分説明すると、半分の子は聞いていない。3分になると、ほとんどの子はポアーンとしている。5分説明したら、誰も聞いていない。10分説明したら、みんな勉強を嫌いになる。それ以上の説明は犯罪行為だ。子どもが、教室で反乱するようになる。説明は30秒以内。これは算数の授業が楽しく、分かるようになるための原則である。

 むろん、中には30秒で説明できない時もある。その時は、内容を分解して、いつの問題を3つ分、4つ分と考えて指示すればいいのである。「分ければ分かる」のである。


工夫とは何か

次の問題は、今日、私が教えたことである。

まわりの長さが18センチの長方があります。たての長さを○センチ、よこの長さを○センチとして、2つの数の関係を式にしましょう。

 この問題を、どう教えるのだろう。むろん、最初は、問題を読む。そして何をするかである。

「この問題をやってごらんなさい。」と、子どもたちに与えたら、大混乱が生ずるだろう。

 5分たっても、10分たってもできない。できるのは進学塾に行っている数人だけである。問題の意味を説明したって、なかなか分からない。説明するほど、チンプンカンプンになる。半分の子は、説明しても分からないだろう。

 私は、最初の1文がすでに難しいと思った。説明しても難しい。そこで、次のように、ステップを付けた。この問題の準備体操をしたのである。

(1)まわりの長さが4センチの正方形を書きなさい。

(2)まわりの長さが8センチの正方形を書きなさい。

(3)まわりの長さが6センチの長方形を書きなさい。

(4)まわりの長さが10センチの長方形を書きなさい。

ここで「やり方がわかった」「たてとよこが関係するんだ」などの声が聞こえる。

早くできた子8名を板書させる。丸を付けた後、順序よく並べた。そして、教科書の問題に戻った。

「まわりの長さが18センチの長方形」である。1つだけノートに書かせた。

 できた子から板書させる。

 このように、新しい問題は、長々と説明しないで、シンプルに分解すればいいのである。シンプルに分解された問題をやっていくうちに、子どもはやり方を見つけて出していく。